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(陵墓課)
本資料は「内行花文鏡(ないこうかもんきょう)」と呼ばれる鏡の一種で,現状での直径は9.6㎝である。全体が銹(さび)に覆われているが,レントゲン写真によって文様や銘文の詳細が判明した。
鏡裏面の中心には紐(ひも)をとおすための「鈕(ちゅう)」と呼ばれる盛り上がりが作られ,その周りには,コウモリが翼を広げたような形の文様が4方向に配置されている。4つのコウモリ形の文様の間には,「長」,「宜」,「子」,「孫」の字が配置されている。これは,「長く子孫に宜(よろ)し」と読み,「(この鏡を持てば)子孫が長く繁栄します」という意味である。
本資料は,文様の特徴でみると,中国の後漢で2世紀前半に製作されたものとなる。一方,この鏡が出土した妻鳥陵墓参考地は,他の出土品からみて6世紀代に築造されたものだと考えられ,製作されてから日本で副葬されるまでに,四百年前後の時間差がある。この間,どのような人の手を経てきたのかは分からないが,日本の古墳時代における鏡の存在意義を考えるときには,非常に興味深い事例である。